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社会人ちゃんの日記

2023年のクリスマス(2023年に視聴したものの一番よくわからなかった映画について)

 

クリスマスですね。

今年もクリスマスらしいものを何も思いつきませんでした。

 

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去年の記事を見るとなんか私、病院に行ってたらしいです。

 

今年は24日午前3時半を過ぎてから眠り、24日午前8時に起き、何をしていたのかというとずっと原稿をしていました。

印刷所に見積もりを依頼した入稿日が締め切りとしては存在しているものの、予約を済ませている訳でもないので25日が明確な締め切りと言う訳でもなく、そもそもこれを携えて何かに参加しようという類のものでもなく、ひたすら自分の趣味でやっているだけ。

ただ、この時期に締め切りを設定すると何となく、過去にやった厳しい締め切りの書き物のことを思い出して、身体が勝手に根を詰め始める。

 

ra927rita1.hatenablog.jp

 

クリスマス感はありませんが年末が近いので、2023年に見た映画で頭の中で処理出来ていないものの話をしようと思います。

 

 

2023年の下半期にイギリスを旅行した。

普段は日本に住んでいるので、日本から現地(ヒースロー)に着くまでの間に13時間かかる。北極圏上空を通過していくルートの直行便である。

同行者ちゃんとは昨今の情勢で最短距離(だと思われる)の口シア上空を飛べないからではないかという話をし合ったものの、2019年12月のフライト情報をネット検索してみたところ東京・ヒースロー間はおおむね11時間~13時間かかる*1。数十年前にイギリスに出張したことがあるという身内も、(当時は恐らくまだ冷戦中だったのではないかと思うが)同じようなルートでヒースローに行ったという話をしてきたので、恐らく飛行機の性能が日々進歩しつつある中でも、「そもそもそれぐらい時間が掛かる」場所なのではないか? とも思いつつあります。

 

私が一分一秒を争う出張客ではなく、あんまり時間を気にしていない旅行客であるということもあろうかと思いますが、飛行機移動がけっこう好きなので、時間が掛かる分にはあまり苦にならない。

そもそも飛行機に乗っていなくとも、自宅で似たような暮らしをしている。

自宅では毎月金を払って契約を維持しているWi-Fiからインターネットに接続して、毎月金を払って契約を維持している映画のサブスクの、それこそ無限に思われるようなラインナップから果たしてどれを見ればいいのかと途方に暮れながら小一時間ぐらい時間を無駄にしていますが、

金を払って飛行機に乗れば、結構新しい映画を無料で見られる*2上、見たい映画が無ければなんかチープなパズルゲームで遊んで時間を潰すこともできますし、時間を無駄にしたところで、どのみち移動時間なので罪悪感がない。

さらに座席に座っているだけで、美味しい食事や酒が提供されてくる。これで周りに人間がいなければ最高。

そもそも空いており、周りの乗客の行儀がいい長距離フライト便は非常に快適ですし、今回の旅程の飛行機は、かなりこれに近かった。

 

この快適な機内で「Beau Is Afraid. 」を視聴しました。

アリ・アスター監督作品では他に「ミッドサマー」と、息子が父親をレイプする(おそらく)短編映画を見たことがあります。

 

 

※以下「Beau Is Afraid.(ボーは恐れている)」本編のネタバレを含みます。

 

 

 


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飛行機内で映画を見ていると、時折乱気流を知らせるアナウンスが入ったり、そうでなくともただでさえ気流の中を飛びながら、無料サービスの有線イヤホンを耳に詰め込んで映像を見るので、あんまり音がはっきり聞こえるということはない。

その環境でさらに字幕が付いていない映画をチョイスしてしまった*3ので、実質ほぼ勘で見たことになる。

タイトルを見て主人公の名前は「ブルー」かなと思いながら見ていましたが、後から調べると邦語版タイトルは「ボーは恐れている」で、主人公の名前、「ボー」だそうです。

 

冒頭はボーが住んでいるアパートから始まる。

ボーが住んでいる室内は備え付けの家具だけがあり、見る人が見れば殺風景だと思うんだろうなと思いますが、個人的にはこざっぱりとして快適そうな室内環境が作られていると思う一方、外はなんか凄いことになっている。

ポイ捨てされたゴミが溜まっている路上、恐らくネオンで彩られたなんか如何わしい店の前で客引きをされている推定男娼、ナイフを持って通行人に襲い掛かる老人、あと、なんか色々。街並みの要素だけは、バルセロナの旧市街中心部に近いホステル(フェラン通り沿い)に宿泊した時に外見たらあんな感じだったなという記憶がある*4

この終わっている街を歩いて、カウンセリングから自分のアパートに戻ろうとしていたボーは、飛び降り自殺を横目に露天商からマリア像を買う。たぶん母親へのお土産だろう。像の裏にそんな感じのメッセージを書いていたので。

 

ボーが住んでいるアパートの治安も悪い。

壁の至る所に落書きがされており、掲示板や壁に張られた注意書きは端が破れたりして、荒んだ共同住宅の雰囲気が出ている。中でもセアカコケグモが出現しています!といった感じの張り紙が、そこら中に張られている。セアカコケグモかはわかりませんが、兎に角毒グモ注意!という感じのそれ。

 

そんなアパートの自分の部屋でボーが寝ていると、夜中にドアがノックされ、その下から隣人から紙を差し入れられる。「音楽のボリュームを下げてくださいませんか」という内容。クッソうるさい部屋がそういえばどこかにあるんですけど、ボーの部屋ではないので主人公が無視していると、また夜中にドアをノックされて紙が差し入れられる。「うるせえっつってんだろ明日仕事あるんだよ」というような内容。その後午前五時頃に差し入れられた罵詈雑言紙が、ボーが寝ているベッドのすぐ脇までやって来る。

 

その後ボーは飛行機の時間に寝過ごし、急いでトランクに荷物と例の手持ち可能サイズのマリア像を詰めて出ようとするものの、なんか隣人トラブルが起こって、トランクを窓から捨てられたんだか、あと鍵もなんか無くしていて、兎に角飛行機に乗れる状態ではなくなり、泣きながら母親に連絡した後、彼は何らかの錠剤を服用しようとするものの水がない。蛇口をひねっても水が出ない。当該の薬+水の検索ワードでインターネット検索すると「最悪の場合死ぬ」みたいな検索結果がサジェストされて、ボーはパニックを起こしながら、玄関の鍵がないままアパート一階のオートロック部分にちょっとした分厚いフリーペーパーを挟んで、道路を挟んで向かい側の雑貨屋に行く。

 


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ボーが道に出ると必ずボーに向かって物凄い勢いで突っ込んでくるスキンヘッドの男を躱しながら店内に行くものの、アパートの正面玄関を開ける鍵がないのでいつオートロックが閉まるかどうかボーは気が気ではない。

気が気ではない中でまず雑貨屋に陳列されているボトル水を掴んで飲み、そこからレジに持って行って清算しようとするものの、クレジットカードが使えない。持っていた大量の小銭を出すが、代金には足りない。ボーがレジでもめている間にも、街を闊歩する不審者の皆さん(ボーを追い回すスキンヘッド、なんか際どい格好してる人、他人の目を潰して奇声を上げる老人、あとなんか色々)が、ボーがフリーペーパーを挟んで開いたままにしているオートロックの出入口を通って、鍵が掛かっていない彼の部屋に向かおうとする。

 

金が足りないので警察を呼ぶと店主が怒鳴っているが、いいぞ警察を呼べと返してボーは慌ててアパートの出入口に向かうものの、最後に出入りした住人がボーが挟んだままにしていたフリーペーパーを外してしまい、鍵を無くしたボーは自分のアパートの部屋に帰れなくなってしまった。

隣の工事中の建物の鉄骨を上って自分の部屋を見に行くと、鍵の掛かっていないボーの部屋は奇人のパーティー会場のようになっていた。(ここなんか、部屋を目の前で寝取られているようで頭が壊れそうだなと思った。)

部屋に戻れないのでボーは仕方なく、その工事現場でそのまま寝る。

 

そして、作業員が何かを削っている音で目を覚ます。

 

目を覚ますと荒れ果てたボーの部屋は兎に角無人になっていたので、他人がオートロックを開けたタイミングでオートロックに入るんだか何とかして部屋に戻り、荒れ果てた部屋を時々片しながら風呂にお湯を溜めて浴槽に浸かると、その天井に血相を変えた男がスパイダーマンのように貼りついている。天井に張り付いた男の汗がその下の浴槽で泡風呂をしているボーに垂れてくる。男の身体の上には張り紙をされていた毒グモが張っている。

数十秒耐えた後、ついに男が天井から落ちてくる。なんか揉みあって色々あった後ボーは殆ど裸のまま部屋から逃げたところで、道でナイフを持って闊歩している(さっきのシーンで犠牲者の目に指突っ込んで潰しながらギャハ笑いしてた)ジジイに目を付けられ、揉みあった末腹をナイフで刺される。刺されたボーは助けを求めて車道を半狂乱に走り回っていたところ、救急車に轢かれ、場面は暗転する。

 

暗転した先で目が覚めると、ティーンの女の子が使っているような部屋のベッドに寝かされており、ボーは点滴に繋がれている。家主の女性が登場すると辛いことがあったわね……という感じでボーを慰める。ボーの腹には、老人のナイフによる刺し傷が残っている。女性は「よくなるまでずっとここに居ていいのよ」的なことを言っている、たぶん。

 

悪夢ならちゃんと覚めろ

この映画は、ずっとこんな感じで話が続いていく。

冒頭ではゴミがそこらに転がってる街並みから路上を行きかう奇人変人、いかにも悪夢の典型的なモチーフっぽい「有り得ない出来事」(玄関からシューッされて綺麗にボーのベッドの前で止まる隣人からの書き置き、「飛行機に乗り遅れて悪戦苦闘するも何故か前に進めず、絶対に間に合わない」という状況など)も、「ああこれは主人公が見ている悪夢なんだな」と思って流し見するんですけど、

話が進むにつれ、いっこうに悪夢から覚める描写もなく、時系列に沿って話が進んでいくので、ナイフを振り回してめった刺しにするヤバ爺も、ボーを超追跡してくる逃走中に出て来そうなスキンヘッドも何もかも、もしかして、現実!?というところに思い至ってしまい、あれをどう処理すればいいのかわからなくなる。現実にしては可笑しすぎるが、どうやら悪夢でもないらしい。現にボーの腹には刺し傷が残ったまま話が進行していく。

 

 

ボーを救ってくれた綺麗な家の婦人には旦那が居り、他に軍の作戦行動中に戦死したらしい息子一人(兄)*5と、ボーに勝手に部屋を貸し出されている娘一人(妹)。

この娘は髭モジャ浮浪者に自分の部屋を侵犯されていることが当然気に食わないので、ボーには何かと敵対的な態度で接してくる。あと、この綺麗な家の庭の敷居の横かどっかにビタ付けで停められているトレーラーハウスに住んでいる太った男がいる。以前この家で救った人物らしく、今その家で匿われている?ボーに対して敵意を剥きだしているし、なんか話の途中で興奮して、夫婦の妻の方の人から医療措置として鎮静剤を打たれていたような気がする。

ボーは夫妻に対して自分のアパートに帰りたいというのか、どこか行く場所があると言うのかわからないんですけど「どこかに行きたい」というようなことを言い、家主からは「あなたはその身体では無理だから」「私たちも仕事あるから明日になったら連れて行くから」という感じでいなされる。

ここでボーは娘の部屋にあった娘のパソコンで何か調べものをして、結果よっぽどショッキングなことが書いてあったらしくディスプレイに向かってゲロ噴射、物音を聞いて入ってきた娘は激怒し、ボーを「元居た場所に返す」的なことを言ってお友達がいる車に乗せ、その中で何故か、ボーに大麻を吸うことを強要する。大麻? たぶんあれは大麻だと思う。そんな感じの色をしていた。

トリップ中にボーは過去の夢を見たような気がしますが、兎に角また目を覚ます。目を覚ますと、あの夫婦がいる家に戻ってきており…………みたいな、悪夢がずっと続く。時系列を持って。今日見た悪夢を書き残すブログ記事みたいなテンションで、下手するとこのまま最後まで行ってしまう。夢ならちゃんと覚めろ。

 

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作中で一番時系列が錯綜するのは、色々あって例の家から逃げ出して来た先の森の中で、ボーは森の中にテントを張って暮らしていた妊婦の手ほどきでヒッピーのコミュニティに入り、そこで芝居を見ることになる。

芝居の題材は、ある男が妻を娶り息子を三人得たが、未曽有の?災害が起きて洪水に流され、家族と離れ離れになってしまう。流れ着いた先の異国で男は牢獄に繋がれるがそこから脱出し、家族との再会を目指すという筋書きで、いつの間にかボーは頭の中でその主人公となって様々な苦難を乗り越えた先に、老人となって森の中に入りヒッピーコミュニティにやってくると、父と離れ離れになった母と三人の息子が壇上に立っているのを見て「これは僕の話だ……」と呟く、みたいなシーンがある。

ここがよくわからない。

妄想というには妙にリアリティがある一方で、この感動的再会が終わったところで、前のシーンでボーが逃げ出してきたきれいな家の横にあるトレイラーハウス住みのストーカーが、ボーの足首につけられていた発信機を元に武装した上でここまで追ってきて、ヒッピーコミュニティの中で銃を乱射し犠牲者を出しまくる展開があるので、劇の筋書き通り、ボーが実際洪水に遭ってここまで流れて来たわけではないというのは確かだと思う。

劇の話は、ボーが頭の中で勝手に深く共感した現れなんじゃないかな、と思っている。つまり、劇に関連するところはボーの妄想だと考えていいだろう(と私は思う)。ボーはこういうフィクションに過度に共感しやすい性質なのかもしれない、と思ったところで、他の話の濃度は全然、作中におけるフィクションの立ち位置ではない。

トレイラーハウスに居たやべー奴が、このシーンでも重武装でボーを追ってきている。ボーが非常に感受性が豊かで、そういう妄想を作り上げやすい性質だと言っても、彼の足首に小型爆弾付きの発信機を嵌めこんでいる奴全てが彼の妄想とは考えづらいのでは? でも小型爆弾が爆発した後にボーの足が吹っ飛んだ描写はないので、あの銃乱射事件も、ボーの認知フィルターが入って過度に演出されている可能性はある。それにしても、足首に発信機つけるなよ。人間が追ってきているというところも幻覚? それとも全部本当なんですか? 何?

 

というのが、延々と続く。

 

2時間59分のこのストーリーに出てくる時間軸には三つあるように思っていて、

 

①ボーの悪夢のような現実(アパート→家→ヒッピーコミュニティ→多分母の葬儀)

②ヒッピーコミュニティでの劇

③ボーの過去編

 

以上の三つの要素の内、基本的に①が長々と続いて「悪夢ならちゃんと覚めろよ……」と思っている内に、②や③が所々で顔を出すイメージ。

とはいえ、実際どういうことかよくわかっていない。だって①でも多分母の葬式会場にやってきたボーに、なんか彼の知り合いらしい女性が声を掛けて来て彼をお持ち帰り→♡♡騎乗位ラブラブ也ックス♡♡→突然の腹上死のコンボが入ったりする。♡♡騎乗位♡♡のシーンが体感十分以上あるので、これ飛行機でAV見てる人になっちゃうじゃん……と思った、真剣に。何あれ? 

話の流れとしては①から連続した展開ですし、あれがボーが見ている悪夢でないのなら極めて悪夢に近い現実になろうかと思いますが、その現実がだいぶ悪夢的なので、実際に何があったのかが検証不可能というか、そもそも検証に意味はない。ボーにとっては①で描かれたことが彼の身の上に起こったことであり、実際何であるかはあまり問題ではないというのは理解するんですけど、それにしても、①で起こることが異常すぎる。マジックリアリズムっていうんですかあれ? 今は別の言葉を使ってあの異常を説明するんでしょうか。

 

 

この訳の分からなさが、この映画を勘で見たからか、本当にず~~~っと訳が分からない話をしているのか気になるんですけど、3時間目を開けたまま悪夢のような現実を見るのは結構体験としてシビアなので、この答え合わせが出来る日が来るのかどうかわからない。

物語の最後の部分で、ボーが多分彼の母親(しんでなかったの?)と対峙するシーンがあって、そこで結構なんか色々喋ってたと思うんですけど、飛行機のジェットエンジン音か気流の音か、低音のゴオオオオオオオという音がしていたことしか覚えていない。

映画を開いて異常を目の当たりにし続けて二時間半経過した時点で、台詞を聞き取ろうとする気力がなかったのもあるでしょうし、実際飛行機の中で視聴していたので本当に聞き取れなかったというのもあると思います。

勘視聴を通して母親が結局息子であるボーに対して、なんか、恨みのような感情を持っていそう……というのは察しがつきましたが*6、冒頭のカウンセラーを引き連れて現れた母親は実体を持ったそれなのか。どこからがボーの脳による脚色なんですか? 全部? あれは何?

 

 

 

*1:東京(成田) - ロンドン(ヒースロー) 2019年12月時刻表 | FlyTeam(フライチーム)(最終閲覧日2023年12月24日)

*2:1か月分の賃金に相当するチケット代を既に支払っているから。

*3:こちらの操作ミスで、字幕を上手く選択できていなかったという可能性もある。

*4:私は自分が過去に体感した記憶に引き摺られてヨーロッパの舞台の話かと思いながら途中まで見ていましたが、この話の舞台はアメリ

*5:ここで息子の部屋か夫婦の寝室かに星条旗が飾られているのを見て、ようやく話しの舞台がアメリカだと気付いた。

*6:ボートをこぎ出したボーが見た回想(おそらく③分類)中に思春期のボー?が男友達を引き連れて母親の洗濯物を漁り彼女の下着を引っ張り出してくるシーンを目の当たりにする母親というものがある。ここと直前になんか穏やかではない雰囲気で対面していたことから良い感情は無かったんだろうなという推定をしている。