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社会人ちゃんの日記

「世界は爆音ではなく、ささやきとともに終わるだろう。」(キース・トーマス著、佐田千織訳『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日』、竹書房文庫、2021年、117ページ)

今週のお題「好きな小説」

 

 

フルタイムの労働を終えてからホワイトサンド精神病院の夜シフトに入ってるくらいの頻度でコピーキャットゲーム*1に勤しんでいるので、小説どころか140字以上から成る文章というものをほとんど読んでいない生活を送っているところ、表紙を一目見て貸出手続きに進んだこの小説がかなり面白かった。

 

裏表紙に書かれているあらすじには、「ファーストコンタクトをノンフィクション風に綴った、異色のモキュメンタリーSF」とある。

宇宙から送られてきた、人類ではない知的生命体によって意図的に作られた「パルス(光線)」の観測によって、以降人類規模で発生した「上昇」と呼ばれる災害をテーマにしたドキュメンタリー風に書き下ろしたSF小説ということです。

 

以降はこの作品に関するネタバレを含むブログ記事になるので、あらすじを読んで関心を持ったオタクの皆さんは今すぐ記事を閉じ、この小説を読んでください。

 

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やおい穴にしてくれ

dic.pixiv.net

 

 

tan8.hatenadiary.jp

 

六月に歯医者の人から「このまま行ったら総入れ歯」「ハイペースなクリーニングが必要 二か月に一回ぐらい」と宣告されていて、そこから綺麗に一か月遅れで先日歯医者にかかったところ、思いのほか怒られが発生しないどころか、「(一部を除いて)よく磨けている」という評価を頂いた。

 

前の記事で引っ張り出していた電動歯ブラシは、結局充電が面倒な上、使用中は汁という汁が周囲に飛び散るので風呂場(ユニットバスの物件に住んでいる)でしか活用できないということもあり、最初の二日間を使ってその後また放置している。

なので多分、定期的な歯間ブラシが歯医者での高評価につながっているのだろう、と思う。「YoutubeShortで他人の体毛を引き抜いたり毛穴を綺麗にしたりする絵面が汚い感じの動画を見ている時」のものと近しい快感が、歯間ブラシにはある。歯医者の人にも褒められます。

 

 

上の口はあれから元気なんですけど、下の口の方に懸念がある。

 

※以下他人の下半身事情が含まれます

 

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付き合ってやってくれよ

 

『付き合ってあげてもいいかな』最新話の展開を知って、商業版を全巻購入した。

元々Twitterで知り合った方がリンク張ってた商業版から存在を知った作品なんですけど、私は同人版の「付き合ってやってよ」があまりにも好きで、同人版だけ買って商業版は無料公開中に読んだことがある程度の状態だった。

けど、最新話の、みわから冴子への「好きだよ」を見た時に……オタクは……………………………………

 

booth.pm

 

※『付き合ってあげてもいいかな』(たみふる、小学館、2024年)最新話まで および 『氷』(アンナ・カヴァン山田和子訳、筑摩書房、2015年)核心部のネタバレを含みます。

 

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人間ってなかなか死なない(フォークナー著、高橋正雄訳、『響きと怒り』、講談社文芸文庫、1997年)

上司との折り合いが、悪い!

 

管理職と平社員の間に立つことが想定されている何らかの役職者が存在しない状態でここ数年、管理職である上司側は「中間に立つことを想定される役職者」程度の労働を求めてくる一方、こちらとしては「役職者」に宛がわれるような昇級もない状態でそんなタダ働きしてやって堪るか、突如そんなことを言われてもこちらとしては対応ができない。引継ぎもないし、前任者も消えてる。

「取り敢えず握ってみて」と言われて鉄棒握り始めた人間が、そんないきなり大車輪できますか? こっちは最初から逆上がりだと聞いてるんですよ。は? 知るか。そんな感じ。そもそも先方が提示してくるレベルというものが、恐らく組織内にある共通の尺度のものではない。どこから持ってきた尺度ですか? それは。

 

 

おんばひがさで労働をさせて頂いているだけで苦痛なのに、できもしない大車輪を求められて意味の分からない詰めが始まるとも~~~~っと辞めたくて毎営業日「助けて!」とあてどもない救いを求めながら枕を涙で濡らしていますが、ここ最近は「今日と同じ明日が来るとは限らないし、何が起きるかもわかりませんからね」と気持ちを切り替え、ひとまず寝て起きて出勤するんですけど、

 

長期間にわたって勤労を続けている人間って、なかなか健康。

 

この世って得てして一寸先は闇、何が起こるかわからないと言われるものですが、今日明日という時間の尺度だと、意外と人間って、どうにもならない。どうにかなるどころか、風邪を引きもしない。あいつ、健康すぎるだろ。

 

この平常、健康、「昨日と同じ今日」の積み重ねはつまり地盤の沈み込みのようなもので、これが積み重なった先にある日突然グラっとくるということかもしれませんが、私が救いを求めている直近で、意外と、元気。どうにかなる気配、まるでなし。

 

フォークナーの『響きと怒り』を、営業日と営業日の合間に読んでいた。Twitterで見たから。「アメリカ南部の名門コンプソン家が、古い伝統と因襲のなかで没落してゆく姿を、生命観あふれる文体と斬新な手法で描いた」*1というものです。

 

 

※以下、『響きと怒り』本文内容のネタバレを含みます。

 

*1:フォークナー著、高橋正雄訳、『響きと怒り』、講談社文芸文庫、1997年 裏表紙

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『イニシェリン島の精霊』(2022)

ra927rita1.hatenablog.jp

 

旅行の記録上では緑島から帰ってきていないんですが、あれから二回台湾へ旅行に行っていて、こいつ(自分)……さては南の島が大好きだな?ということにようやく気付きつつある。

南の国のフルーツが大好き。でっかくてやわらかくて甘くて、そうでなくともなんか、目新しい形をしているから。

飛行機内で映画を見ることも好き。サブスク映画サービス程充実している訳でもない丁度いい作品数の中に、日頃日本語圏のインターネットを徘徊していて見ることのない異国の話題作が混じっているから。

 

旅行の帰りに『イニシェリン島の精霊』を見ました。これは日本語圏インターネットでも封切りの時に話題になった映画で、Amazonプライムでも確か配信されている気がして、ことあるごとに見よう見ようと思っていましたが、何だかんだ見ていなかった。

 

アイルランドの孤島で暮らす男二人、ある日急に仲たがいをしてしまい……」というあらすじは知っていたので、視聴によって何かしら過去が明かされるタイプの話なんだろうなと思っていた。

 

※以下『イニシェリン島の精霊』(2022)のストーリーネタバレを含みます。

 

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『ウィッシュ』(2023)面白かったのでオタクの皆さんは是非見て下さいね

インターネット(Twitter)でオタクにこき下ろされていたディズニー映画「ウィッシュ」を見たら思いのほか面白かったよという日記です。

 

公式のあらすじ

願いが叶う魔法の王国ロサスに暮らす少女アーシャの願いは、100才になる祖父の願いが叶うこと。だが、すべての“願い”は魔法を操るマグニフィコ王に支配されているという衝撃の真実を彼女は知ってしまう…。みんなの願いを取り戻したいという彼女のひたむきな思いに応え、夜空から舞い降りてきたのは“願い星”のスター。スターに導かれ、相棒である子ヤギのバレンティノら仲間と共に、アーシャは立ち上がる。
「願いが、私を強くする」――アーシャとスターの運命の出会いが、王国に巻き起こす奇跡とは…? (ディズニー公式「ウィッシュ」より(最終閲覧日2024年7月11日))

 

知っていた前評判


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forbesjapan.com

 

インターネットのオタクツイートでは「意味が分からない」「王だけがまともで主人公の方が悪役っぽい」「王が報われなくて可哀想」という評判が(おそらく)流れて来ており、ホーンと思った。

私はディズニー映画はあまり関心をもって追っているオタクではないし、そもそも映画のことはよく知りませんが、流石に大手が売り出している映画は敢えて避けようとしない限りどこかで見ることになる。今回もそれを敢えて避けなかった。

逆に、「酷評されるディズニーアニメ映画」に関心を持ったクチでもあります。流石に金を掛けているだけあって一定水準にはなるので、そこまで激しい酷評をされるイメージがない。金を掛けてなんか凄いB級映画になっちゃったスターウォーズ/最後のジェダイとかもあるような気がしますけれども。

 


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※映画『ウィッシュ』(2023)のネタバレを含みます。

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ミシェル・ウエルベック 著、野崎 歓 訳『地図と領土』、筑摩書房、2013年

『地図と領土』を読んだ。

読み始めたときは「主人公が大学教員で、最終的に選挙によってフランスにイスラーム国家が樹立する話」だと思っていたんですけど、主人公がなんか画業に専念してる壮年男性ということを知り、どうやら『闘争領域の拡大』と勘違いしていることに気が付いた*1

 

以下、『地図と領土』全編のネタバレを含みます。

 

*1:記事を書き終えてちょっと調べたら、これは『服従』のあらすじであって『闘争領域の拡大』ではないらしい。もう滅茶苦茶

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