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社会人ちゃんの日記

美しい涙を見よう!(「THE FIRST SLAM DUNK」(2022)を見た)

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ちょっと前にお友達と「THE FIRST SLAM DUNK」を見に行った。

お友達がこの映画を見るのはもう二回目で、何でも凄い面白かったらしい。私は『スラムダンク』の漫画を、遥か昔に読んだことがある程度……で、Twitterのおすすめ欄でオタクが話題にしているのを見る程度。正直映画を見に行くつもりはなかったものの、過去にそのスタンスで「シン・ゴジラ」と「君の名は、」の映画館での視聴を見送ったことをたぶんこれから先ずっと後悔し続けるだろうし、誘ってくれたそのお友達と見る映画はだいたい面白いので*1、おたく(二人称)がそこまで勧めるならじゃあ見るか、という感じ。

 

以下上映中映画のネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

過去に漫画の「スラムダンク」を読んだ自分の朧気な記憶によると、確か世は1980年代とかそこら、神奈川県の高校生が舞台だったと思うんですけど、「THE FIRST SLAM DUNK」は序盤で沖縄に飛ばされる。

ここで、(あれ? スラムダンクって、沖縄の話だっけ?)になる。

この映画は原作漫画の再現をするという訳ではなく、原作漫画の登場人物の一人「宮城リョータ」にフォーカスを当てた作品になっているということを知らずに映画館に入ったということなんですけど、彼の半生がなかなかどうして上手いようにいかない。

いずれにせよ思春期の人生って、大概上手いようにいかない場面が多いと思うんですけど、ここで描かれる父兄の死は本当にどうしようもない。母も途方に暮れている。スラムダンクって、こんな家族環境の話する漫画だっけ? 何せ漫画を読んだのは下手すると10年以上前のことなので、内容を結構忘れている。というか漫画の主人公、赤い髪じゃなかった? いや、宮城リョータとして画面に出てるこの男性キャラクターにも見覚えはあるんですけれども。

 

そうこうしている内に、宮城一家は沖縄から神奈川県に引っ越す。この頃にはOPのセル画(というものだと思う、あれはたぶん)から急に出てきた、序盤のちょっと 往年のカップヌードルのCMを思わせるような ポリゴンっぽい気がする3Dの画面にも結構慣れてくるし、何となればあれ、序盤の1 on 1シーンでしか使われていなかったのかもしれない。よく覚えていない。よく覚えていないぐらい違和感がなくなる。

 


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沖縄から越して来た少年リョータが神奈川県の団地でバスケットボールをしていると、近隣住民に怒鳴られる。子供が怒鳴られるの見ると心がキュッとしますね。いや、あんな近距離でバンバンバンバンドリブルされたら堪らんわというのも、本当にそうなんですけれども。

こうして縄張りから出ちゃった猫が他の猫に追い立てられて、そのまま遠くへ行ってしまう感じに流離ったのかはともかく、リョータはバスケットゴールのある公園に辿り着くんですけど、そこでかつてリョータに1 on 1でバスケを教えていたバスケ上手 期待の選手だった兄ちゃんにちょっと面差しの似ている、年上の少年が現れるんですね。俺と一緒にバスケをしよう。一人でやっていても仕方ないじゃないかと。

そう、勘のいい皆さんならもうお気づきかもしれないんですけど、(ちょっと兄ちゃんに似てるな)と赤の他人の私さえ思った出現の他人があのグレ方はないだろ。ひどい! という感じで、あんまり原作知らない状態で映画を見に行っても結構スーッと入って来る、来ます、来ました。

 

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色々あって宮城リョータがバスケ部に復帰、なんか凄いグレ方してた三井寿が更生(というか……反抗期を終わらせるというか……お清めを済ませるというか……)した後だったか何だったか、宮城リョータの半生の後に映画のメインとして描かれるのは山王戦です。

スラムダンクで描かれる主人公校が湘北高校というところなんですけど、神奈川県代表になって無事出場したIHの二戦目で当たるのがこの山王高校。

IHを連覇し続けている秋田の高校で、高校生らしからぬ立派な体躯の生徒さんが揃っていらっしゃり皆坊主。率直に言って柄の悪い湘北高校の方々とは、なんか違う方向で結構威圧感があります。

 

 

ところで私はこの映画を見たのは錦糸町で、私はあの辺の東京下町のことをこち亀1巻ぐらいの治安で見ているところがあるので常に緊張感をもって挑んでいるんですけれども、場所が悪いのか運が悪いのか、普通上映のところなんか、ささやかな応援上映が催されていた。「がんばれ~」「これ勝つの?」という感じのささめき声が、結構な頻度でスクリーン前方から聞こえてくる。

この時映画館の小声ってマジで響くんだな……と思ったんですけど、一方で上映されているのが試合なので、小声応援がスクリーンに響き渡るわりに、そこまで気にならない。何となれば、この映画で試合の行方がどうなるか結構わかってないので、私の方も「これ勝つのかな……」と思いながら見ている。

これがもしキャラ名を叫ぶオタクだったら、フラットな気持ちで映画を見てるこちらもブチギレしていたと思うので応援上映というか、観客試合のような。そう考えると声出ししているのが試合の成り行きに関心がある観客で良かった。いい場所だったのかもしれません、錦糸町。いい試合でした。

 

 

 

漫画を買った。

 

映画を見て漫画ってそう言えばどういう話だっけ……(そして、今回の映画で明らかになった宮城リョータの家族の話は、本当に無から出てきたんだろうか……或いはどこかで匂わせがあったのだろうか……)というところが気になって、結局スラムダンクを全巻購入した。

スラムダンクは作者の意向によってか電子書籍がないようで、物理書籍。全20巻。購入から送付までどれぐらいの日数がかかるのかハラハラしていたんですけど、存外素早く来た。置き場所はないので床に積んでいる。

宮城リョータの半生は無から生えてきたのか?」という私の最初の問いですが、漫画はキャラの生い立ちとかそういうのやってる隙間なくバスケしようぜ!という感じで、練習練習試合試合試合というテンポで進んでいく。練習と試合をしていないときは喧嘩をしている。各キャラクターの家族の話とかは殆ど出て来ない。スラムダンクの親、沢北の父親ぐらいしか顔が出て来ない。宮城の家族の設定は連載時からあったんですか? というか、もっと親の顔見ろ。

でも、高校生ってそんな感じですよね。しかも桜木花道とか、なんか、お前、親の顔……今見れる……? というのもちょっとあります。「あの死なれ方してあんな屈託のない性格してるとは考えづらいぞ」というオタクと、「あれでご存命とはちょっと考えづらいだろ」というオタクが頭の中に二人いる。

いずれにせよ湘北面子は、私の記憶が正しければ、誰も親の顔を回想しないです。バスケしてる時にいちいち親の顔出さないだろというのは本当に正論。親の顔なんか出さなくていい。試合の一瞬一瞬を楽しんでくれ。

 

 

 

 

ところで映画を見ていた時から薄々思ってたんですけど、私(オタク)は赤木が花道に背中を叩かれている図の概念が非常に好きだなあと思いました。赤木というのは湘北高校の主将です。いいからテーピングだ!のコマがネットでよくおもちゃにされていますが、あのコマに写っているキャラクター。

 

というのも、映画だともっとしょーもない先輩という感じでしたけど、漫画の作中で試験を理由に試合サボって赤木にぶん投げられてから「お前とバスケするの苦しいよ」と言った同輩?の言うことは、正直わからんでもないからだ。

絵を描くから皆イラストレーターを目指すのかというと違うだろうし、水泳をするから皆競泳選手を目指すのかと言うのも違うだろう。まして湘北高校は県立高で、IHに行くことを主眼として活動する私立エリート校のバスケットボール部に入ったわけでもなし……というのは、何も無茶やわがままを言っているわけではないと思う。

一方で、バスケットボールはチーム競技であり、それゆえに志を持つ赤木は湘北高校で二年間無名のまま埋もれ続けてきたと思うと、しょーもないことを言うクラスメイトによって赤木の機会が損失するのはやるせない心地にもなる。

ここで上手いことモチベーションがあんまない人間をノセることが出来れば、色々違ったのかもしれませんが、赤木はそういうことが出来るタイプではない。妹の晴子ちゃんにも「あの不器用なお兄ちゃんが……」と言われている。

 

その赤木の言動が、桜木花道のコントロールという面においては結構かっちり嵌ったという図を見ていると、オタク(一人称)は、ああよかったな赤木、良いチームメイトが入ってきて本当に良かった、よかった……いや、桜木だけがチームメイトってわけじゃないんだけど……赤木がコントロールとか考えずに率直に打てば、その分桜木花道は響いてくるじゃん…………赤木…………チームで試合が出来て、強豪と渡り合うことができて…………赤木の流す涙、美しいよ…………きれいだね…………

 

 

*1:例えば以前お互いワンピースみりしらの状態でフィルムレッドを見に行ったのだが、これが主観的にかなりの当たり作品だった。